【要約・感想】採用基準 - 伊賀泰代

本の内容

内容紹介より

就職超難関企業と言われるマッキンゼーは、地頭のよさや論理的思考力が問われると思われがちだ。しかし元採用マネジャーの著者は、このような定説をきっぱりと否定する。マッキンゼーでは世界で通用する人材を求めており、頭のよさだけではない。それは現在の日本が必要としている人材像と同じと言える。

目次

  • はじめに
  • 序章 マッキンゼーの採用マネジャーとして
  • 第1章 誤解される採用基準
    • 人気の高まりと誤解の拡大
    • 誤解その1:ケース面接に関する誤解
    • 誤解その2:“地頭信仰”が招く誤解
    • 誤解その3:分析が得意な人を求めているという誤解
    • 誤解その4:優等生を求めているという誤解
    • 誤解その5:優秀な日本人を求めているという誤解
    • Column 東京大学における法学部と経済学部の学生の格差
  • 第2章 採用したいのは将来のリーダー
    • 問題解決に不可欠なリーダーシップ
    • リーダーシップは全員に必要
    • 将来のリーダーを採用するという戦略
    • スクリーニング基準と採用基準の違い
    • Column 保守的な大企業で劣化する人
  • 第3章 さまざまな概念と混同されるリーダーシップ
    • 成果主義とリーダーシップ
    • 成果より和を尊ぶ組織
    • 救命ボートの漕ぎ手を選ぶ
    • 役職(ポジション)とリーダーシップ
    • マネジャー(管理職)、コーディネーター(調整役)
    • 雑用係、世話係
    • 命令する人、指示する人
    • Column 能力の高い人より、これから伸びる人
  • 第4章 リーダーがなすべき4つのタスク
    • その1:目標を掲げる
    • その2:先頭を走る
    • その3:決める
    • その4:伝える
    • Column マッキンゼー入社を目標にする困った人たち
  • 第5章 マッキンゼー流リーダーシップの学び方
    • カルチャーショックから学ぶ基本思想
    • 基本動作1:バリューを出す
    • 基本動作2:ポジションをとる
    • 基本動作3:自分の仕事のリーダーは自分
    • 基本動作4:ホワイトボードの前に立つ
    • できるようになる前にやる
    • 自分のリーダーシップ・スタイルを見つける
    • Column ホワイトカラー職種も海外流出?
  • 第6章 リーダー不足に関する認識不足
    • 組織的・制度的な育成システムが必要
    • 絶望的な「グローバル人材」という言葉
    • 「優秀な人」の定義の違い
    • カリスマリーダーではなく、リーダーシップ・キャパシティ
    • 非常時の混乱、財政難の根因となるリーダー不足
    • Column 不幸な海外MBAへの企業派遣制度
  • 第7章 すべての人に求められるリーダーシップ
    • あらゆる場面で求められるリーダーシップ
    • 上司の判断を仰がない若手コンサルタント
    • リーダーシップは学べるスキル
    • 分散型意思決定システムからの要請
    • Column リーダー養成に最適なNPO
  • 終章 リーダーシップで人生のコントロールを握る
    • 問題が解決できる
    • 成長が実感できる
    • 自分の世界観が実現できる
    • 世界が広がる
    • 変わっていくキャリア意識
    • 価値観転換機関としてのマッキンゼー
    • 広がる世界で人生のコントロールを握る
  • あとがき

感想

リーダーシップに書かれているが、マッキンゼーでの内容に寄りすぎていてリーダーシップについてきちんと学びたい人には向かない。文章は読みやすいので、流し読みしながら2時間弱で読める。

要約

著者の経験を元に、マッキンゼーにおける採用、ひいてはこれからの世界で求められる人材の”採用基準”について書かれた書籍。

マッキンゼーの採用基準

マッキンゼーでの採用は、「とにかく考えることが好きか」「どのような思考プロセスか」の2つが基準であり、ケース面接はそれを確認するためのものであるとのこと。そのため、ケースが解けなかったと思っていたが内定したり、その逆にケースが解けたのに落ちたということが起きる。

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では、ケース面接では何が見られているのでしょう? なによりも面接担当者が知りたいのは、「その候補者がどれほど考えることが好きか」、そして「どんな考え方をする人なのか」という点です。考えることが好きな人なら、どんな課題についても熱心に考えようとするでしょう。「考えることが楽しくて楽しくて」という人でないと、毎日何時間も考える仕事に就くのは不可能です。

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ビジネスケースのような仮定の条件をおいて議論をすると、その人の思考プロセスや思考スタイルが如実にわかります。面接者が知りたいのは、「その思考プロセスが正しいか正しくないか」、「よいか悪いか」ではなく、「どんなタイプの思考プロセスをもつ人なのか」ということです。

リーダーシップ

また、マッキンゼーではこれに加えて「将来のリーダー」であるかも採用基準であり、問題解決スキルに加えて問題解決リーダーシップが強く求められている。

位置: 719

問題解決スキルとはご存じのとおり、MECEやロジカルシンキング、仮説思考、フレームワークなどの思考テクニックを使って、問題を整理・分析し、解を見つけるための技術です。一方、問題解決リーダーシップとは、解くべき課題(イシュー)の定義から、分析の設計、関連する組織や人とのコミュニケーションを含む一連の問題解決プロセスにおいて、リーダーシップを発揮することです。

位置: 1,197

しかし繰り返しになりますが、リーダーは組織の和よりも成果を出すことを優先します。したがって強力なリーダーは、同じ時代、同じ空間を共有する人にとっては、必ずしも「一緒に働いて楽しい人」ではありません。

リーダーに求められるのは、「目標を掲げる」「先頭を走る」「決める」「伝える」の4つである。

目標を掲げる

位置: 1,265

まずリーダーに求められるのは、チームが目指すべき成果目標を定義することです。そしてその目標は、メンバーを十分に鼓舞できるものである必要があります。

先頭を走る

位置: 1,344

リーダーというポジションを「目立ちたがり屋がやりたがるポジションだ」と考えている人は、リーダーとして先頭に立ち、苦労した経験がないのでしょう。リーダーは多くの場合、他のメンバーより圧倒的に大きな負担をしょい込んでいます。それでも成果を上げるために、最初の一人になろうとする人がリーダーなのです。

決める

位置: 1,366

リーダーとは、たとえ十分な情報が揃っていなくても、たとえ十分な検討を行う時間が足りなくても、決めるべき時に決めることができる人です。議論を打ち切り、決断すべきタイミングはどの時点なのか、判断できる人です。

伝える

位置: 1,422

黙っていても伝わるとか、わかってくれているはず、は通用しません。問題が発生した場合も、問題の原因や対処方法の選択肢、さらに、その中からなぜこの案を選んだのかという判断の根拠も、言葉で説明する必要があります。これがアカウンタビリティ(説明責任)と呼ばれるものです。

位置: 1,436

強いチームとは、多様な価値観をもつ人が集まったチームです。そして多様な個性の人が集まったチームでは、リーダーには常に「言葉で伝える」ことが求められるというわけです。

これから求められるのはリーダーシップ

位置: 1,883

欧米における優秀な人の定義において、決して抜けることのない項目がリーダーシップです(ほかには、「クリエィティビティ」や「イニシアティブ」(自発的に声を上げ行動に移す態度)、「ジャッジメント」(判断力)などを挙げる企業も多いと思われます)。

位置: 2,439

私は、「リーダーシップを発揮することは、自動車のハンドルを握ることと同じである。リーダーシップを身につければ、自身が人生のコントロールを握ることができる」という表現をよく使います。