転生したらスライムだった件1 - 伏瀬

あらすじ

何という事もない人生を送っていた三上悟は、通り魔に刺され37年の人生に幕を閉じた……はずだった。ふと気がつくと、目も見えなければ、耳も聞こえない……。そんな状況の中、自分があの“スライム”に転生してしまった事に気づく。最弱と名高いモンスターである事に不満を感じつつも、お気楽スライムライフを満喫する三上悟だったが、天災級のモンスター“暴風竜ヴェルドラ”と出会ったことで運命は大きく動き出す――。 ヴェルドラに“リムル”と名付けてもらい、スライムとして新たな異世界生活をスタートさせた矢先、ゴブリンと牙狼族との争いに巻き込まれ、いつしかモンスターたちの主として君臨することに……。 相手の能力を奪う『捕食者』と世界の理を知る『大賢者』、二つのユニークスキルを武器に最強のスライム伝説が今始まる!

感想

スライムが主人公となる異世界転生ものでは、一番有名だと思われるのがこの物語。典型的な異世界転生×主人公最強ものである。 WEB版でも読むことができるが、書籍版のほうが構成などが読みやすくなっている。

プロット(ネタバレ)

  • スライムとして転生し、最強と言われる竜種・ヴェルドラと出会う
  • ゴブリンと出会い、牙狼族の襲撃から助ける
    • ゴブリンと牙狼族が配下に
  • ドワーフ王国に物資の調達に出向く
  • 冒険者3人と爆炎の支配者・シズが魔物に助けられ集落にやってくる
  • シズの内にあるイフリートが暴走するも、リムルが吸収し事なきを得る
  • 死が迫ったシズをリムルが吸収することで人型をとれるようになる

転生したらスライムだった件2 - 伏瀬

あらすじ

ゴブリン族と牙狼族の主として日々を過ごすリムルの前に、突然現れた6人の鬼族(オーガ)。 ちょっとしたいざこざの末に話を聞くと、村がオーク達の手によって殲滅させられたという。 通常であればオーク達などオーガの敵ではないはずなのに……。 一方そのころ、オーク達の進撃は続いていた。次の標的はリザードマン。 果たしてこの異常事態にリムルはどう動くのか!? 3勢力の様々な想いが交差する激闘の第2弾。はやくも登場!

感想

ようやく物語が動き出した2巻は、いわゆる主人公最強、俺TUEEEな内容。Web版と比べると、構成も変わっており読みやすくなっている。 展開は王道で主人公の葛藤なども特にないので、あっさりと読むことができる。

プロット(ネタバレ)

  • オークによる進軍
    • オークに集落を壊滅させられたオーガが配下に加わる
    • リザードマンの族長の息子・ガビルが周囲のゴブリンを引き入れ工作を行う
      • リムルの集落にも訪れるが交渉決裂
    • ドライアドからオークロードの情報がもたらされ、リザードマンの族長に同盟の使者を送る
      • リザードマンはこれを了承し、合流まで籠城戦をする意思を固める
  • ラプラスの手引きによりガビルが謀反に成功、籠城戦から一転しオークに攻勢をしかける
    • オークが死体を吸収することで強化され徐々に劣勢に
  • リムルらがリザードマンとオークの戦いに参戦し勝利
    • オークロードが魔王となるが、リムルが捕食することで勝利
  • ジュラの森大同盟が結成される

烙印の紋章II 陰謀の都を竜は駆ける - 杉原智則

あらすじ

初陣で勝利を飾り帝都へ凱旋したオルバ。都では皇帝の専横が目立ちはじめていた。反皇帝派の不穏な噂を耳にしたオルバは、真相を探るため建国祭の大剣闘大会に出場することになる。ガーベラからの使者ノウェ、ビリーナに敵意を燃やす皇太子の義妹イネーリ、オルバを操ろうとするフェドムなど、帝都は様々な思惑の坩堝と化す。 そんな中、オルバは皇太子と剣闘士、二つの役割の間で揺れ動く。一方、ビリーナはオルバへの複雑な想いと、異国の姫という立場の間で思い悩む。はたして二人の関係と帝都を舞台にした政争の行方は──!?

感想

主人公ら登場人物の内面に焦点が当てられた第二巻。オルバは、メフィウスに復讐心を燃やす剣闘士オルバとメフィウスの王子としての振る舞いのギャップに悩むようになる。また、ビリーナとイネーリのオルバへの気持ちの変化と、それぞれへの思惑などが動き始める。

やや話の展開には欠けるが、今後の展開における登場人物の心理描写を固めるという意味で重要な巻になっている。

プロット(ネタバレ)

  • 戦場から戻ったオルバは仮病を使い、自室にこもりがちになる
  • その一方で、国内では反皇帝派の動きや、皇帝の専横などが目立つようになる
  • オルバはその中で、敵であるオーバリー将軍とガーベラからの使者・ノウェの不穏な動きを察知する
    • 豪腕で知られる剣闘士パーシルが関わっていることを知る
  • 剣闘士として剣闘大会に出場することで、陰謀を探り始めるオルバ
    • 自らの復讐心を明かすことでパーシルの信頼を得る
    • 陰謀の計画を聞かされ、陰謀に参加することになる
  • 剣闘大会でパーシルを破り優勝したオルバは、皇帝と貴族たちの前で表彰されることとなる
    • 剣奴隷を利用しクーデターを起こそうとした反皇帝派筆頭のザット・クォークの企みを防ぐ
    • ザットが死ぬことで、クーデターとオーバリーとノウェの繋がりが絶たれる
  • オルバはクーデターを防いだ報奨としてパーシルら剣奴隷を自らの配下に加える
  • 諸城塞国家の中のひとつ、アークス・バズガンが西方のアプター砦を襲撃する情報がもたらされその守護命じられるオルバ

烙印の紋章 たそがれの星に竜は吠える - 杉原智則

あらすじ

剣闘士から一国の皇子へ──。 杉原智則が贈る、新ファンタジーが登場!

かつて高度な知能を持った竜が支配し、魔素を利用した文明に支えられた世界。 十年の間、戦争を繰り広げてきたメフィウスとガーベラは王族同士の政略結婚により、その長い戦いに終止符を打とうとしていた。 幼い頃、戦争により故郷を追われ剣闘士となったオルバは、瓜二つの容姿をしていることから、婚礼を控えた、うつけと噂されるメフィウスの皇子とすり替わることになる。 一方、勝気なガーベラの姫・ビリーナは、皇子を篭絡して自国の利益を図ろうとひそかに決意する。 そんな二人の婚礼の途中、何者かの襲撃があり!? 二人の思惑と和平の行方は──?

感想

世界観や舞台設定は、割りと王道な剣と魔法のファンタジー。奴隷として剣闘士となった主人公・ギルが、メフィウスの王子となり、国家間の争いごとなどにに巻き込まれつつ才覚を発揮していくというもの。しかし、魔法自体はあまり一般的なものではないようで、戦闘において魔法が使用されることは少ない。

文章力がありしっかりと描写をしているので、ライトノベルとしては比較的重厚感のある文体。ただし、戦争シーンはややご都合主義な感もある。もう少し智謀を駆使して戦いを期待してしまった。

プロット(ネタバレ)

  • メフィウスとガーベラとの戦争が起きる
    • 兄・ロアンが徴兵されオーバリー将軍の砦に向かうが、将軍に見捨てられ生死不明
    • ガーベラ軍に村を襲われるが、同じガーベラ軍のリュカオンに助けられる
    • メフィウス軍のオーバリー将軍から襲撃を受け母は死にアリスは行方不明となる
  • オルバは窃盗などを行い生き延びるが仲間の裏切りにより捕まり奴隷として剣闘士になる
    • メフィウスの王子ギルと似ていることから魔術で作られた鉄仮面をつけられる
  • 2年後、メフィウスの王子ギルはある事件がきっかけで殺される
    • メフィウスの貴族フェドムはたまためその場に居合わせオルバを王子の替え玉にする計画を立てる
  • 王子のフリをしたオルバはガーベラの姫・ビリーナとの婚礼の儀式に向かうが、そこで何者かの襲撃を受ける
    • 襲撃はガーベラの将軍・リュカオンによるものと判明、リュカオンは砦を乗っ取り反乱を起こす
      • オルバはこれを討つを命じられ戦場へ
      • 一計を案じ、剣闘士・オルバとして砦に侵入しリュカオンを討つ

【要約・感想】アウトラインから書く小説再入門 - K.M.ワイランド、シカ・マッケンジー

本の内容

内容紹介より

「アウトライン」とは、小説を執筆するうえでのロードマップ。最初にアウトラインを構築することこそが、小説を最後まで「書き切る」ための近道です。時間をかけてアウトラインを作ると、物語にバランスとまとまりが生まれる、伏線がうまく配置できる、主観が計画的に選べるなど、さまざまな成果が期待できます。  本書では、アメリカ在住の現役作家が、アウトライン構築にあたっての独自のメソッドをステップごとにナビゲートします。既に小説をたくさん書いている人には執筆術の「再入門」として、初めて書く人には基礎知識の習得に活用できる一冊です。

目次

  • chapter.1 アウトラインは必要か?
    • アウトラインについての、よくある四つの誤解
    • アウトラインで得られる七つの成果
    • ─著者に訊く
  • chapter. 2 アウトラインを作る前に
    • 個性と作品に合わせた方法を工夫しよう
    • 時系列に沿わないアウトラインの例
    • アウトラインのツール
    • ─著者に訊く
  • chapter.3 一文で物語を表す「プレミス」のまとめ方
    • 発想の幅を広げる「もしも(What if )」クエスチョン
    • 今、プレミスを書いておきたい六つの理由
    • プレミスを徹底的に生かす「アウトライン前」クエスチョン
    • ブレインストームで収穫を得るための五つのヒント
    • ─著者に訊く
  • chapter.4 全体の下書き(ゼネラル・スケッチ)……1|点と点をつなげる
    • シーン・リスト|とりあえず、今すぐに思い浮かぶシーンを挙げてみよう
    • 点つなぎ|マークした曖昧な部分のアイデア出しをしよう
    • ─著者に訊く
  • chapter. 5 全体の下書き(ゼネラル・スケッチ)……2|基本要素を見つける
    • 動機、欲望、ゴール|フィクションの中核をパワフルに据える
    • 対立/葛藤|これがなければ人物とプロットは存在しない
    • テーマには作者の真実が表れてこそ意味がある
    • ─著者に訊く
  • chapter. 6 人物像の下書き(キャラクター・スケッチ)……1|バックストーリーを作る
    • 本編をフル始動させる「インサイティング・イベント」の作り方、生かし方
    • プロットを豊かに広げる「バックストーリー」の作り方
    • バックストーリーの適度な使い方
    • ─著者に訊く
  • chapter. 7 人物像の下書き(キャラクター・スケッチ)……2|人物インタビュー
    • 人物像をくまなく作り込む「人物インタビュー・質問リスト」
    • 無口な人物の本音を引き出す「フリーハンド・インタビュー」
    • 〔表〕エニアグラム・チャート
    • ─著者に訊く
  • chapter. 8 舞台設定でユニークな世界観を作る
    • その舞台設定はストーリーとぴったり合っていますか?
    • 登場人物はその舞台設定にどう反応しますか?
    • その舞台設定から心理的に影響を受けますか?
    • 舞台設定が多すぎていませんか?
    • 世界観構築クエスチョン
    • ─著者に訊く
  • chapter. 9 詳細アウトラインで物語を育てる
    • あなたが書こうとしているのはどんなストーリー?
    • ストーリー構成のチェックポイント
    • あらゆるストーリーに欠かせない三つの要素
    • ストーリーを端正に仕上げる「フレーミング
    • 「このシーンは無駄」と言わせないドミノ式展開
    • ─著者に訊く
  • chapter.10 清書版アウトラインでロードマップを描く
    • すべてのシーンを整理し、評価しよう
    • 章やシーンの区切りを考えよう
    • 全体のリズム感を演出する配分調整
    • ─著者に訊く
  • chapter.11 アウトラインを活用しよう

感想

『ストラクチャーから書く小説再入門』」の前作となる本書。アウトライン=プロットの書き方について詳細に書いているので参考になるが、ある程度の前提知識があったほうがより理解が深まる。そのため、『ストラクチャーから書く小説再入門』のほうから読んだほうが良いのではと個人的には思う。

要約

プレミス

ストーリーを1文にまとめたものをプレミスと言う。これは、その作品のコンセプトでありアイデアのコアとなるものであり、そのため、アウトラインを書く前にプレミスを作る必要がある。

本書では、主要なシーンや登場人物、葛藤、結末などの構想がある程度固まったらプレミスを作るとありますが、プレミスを作りながら構想を練るという反復をしても良いかと思う。

プレミスを作るためのの発想法に、「もしも〜したら?(What if 〜 ?)」という疑問を投げかけるものがある。

位置: 474

ほとんどのプレミスは「もし~したら(What if)」という疑問で始まります。

•もし少年の知能が身体より早く発育したら? (オースン・スコット・カードの『エンダーズ・シャドウ』)

•もし孤児が見知らぬ富豪から巨額の遺産を贈られたら? (チャールズ・ディケンズの『大いなる遺産』)

•もし私たちの夢が実際に起きていることだとしたら? (私の小説『Dreamlander』)

位置: 479

「もし~したら?」という問いには創作を生むパワーがあります。「もしも」と明言されていなくても、つきつめればどんな小説や物語や記事にも「もし~したら?」が根底にあるはずです。

位置: 499

「もしも」のリストができたら、それぞれに対して「予測されること」を書きます。平均的な読者がこのストーリーを読んで予測しそうなことを、考えつく限り書き並べます。その予測を反転させれば「予想外の展開」となるはずです。

「もしも」のアイデアを洗い出し、どれを採用するかを決めれば、大筋のアウトラインが見えてくる。

位置: 531

プレミスを書くには主人公を決めなくてはなりません(できるだけ具体的に。先の例でも氏名、職業、性格の特徴が入っています)。これにメインの葛藤を付け加えれば、プロットの大筋が浮き上がります。「もしも」クエスチョンで得たアイデアを、プレミスの文でストーリーに落とし込みます。

位置: 566

プレミスをめぐる質問と共に、次の質問にも答えてみて下さい。

•プロット上の大きな出来事を四つか五つ挙げるとしたら何?

•それぞれの出来事に最低二点、ひねりを加えたら?

•ひねりを加えたバージョンは登場人物を何かに駆り立てるか?

•ひねりを加えたバージョンにはどんな舞台設定の追加が必要か?

•どの登場人物が主人公になりそうか?

•インサイティング・イベントに最も影響を受ける人物は誰か?

•その人物は人生において最低二つの大問題、あるいは不安を抱えているか? それらの問題のうち、最も強い葛藤やドラマを生むのはどれか?

•その問題は他の人物たちにどんな影響を及ぼすか?

全体の下書き - 点と点をつなげる

位置: 640

プレミスを船に載せたら、物語の海へ出航です。この航海を私は「全体の下書き(ゼネラル・スケッチ)」と呼んでいます。ここで行なうことは、これまでに出たアイデアを書き出してプロットの空白を見つけ、ストーリーのアークを点検すること。言い換えれば、アウトラインの大枠作りです。まだディテールは書きません。

次に、シーンをいくつか思い浮かべて、その要約を箇条書きにする。そして、何が足りないのかを洗い出す。

位置: 645

ストーリーについてすでにわかっていることを並べ、あらすじのようにして眺めながら、未定の部分をマークします。同時に多くの「もしも」と「なぜ」も考えます。なぜ人物はこんなことをするのか? なぜ彼女は過去に腹を立てているのか? なぜ彼は決定的な瞬間で意外な決断をするのか?

位置: 743

行き詰まったらQ&Aで扉を開く  創作にスランプはつきものです。煮詰まったら質問形式で考えましょう。「姫が塔に監禁されている」なら「どうすれば姫を塔から出せるか?」。疑問符を打つだけで、驚くほど発想が広がります。句点の「。」だと発想も行き止まり。「。」は思考を終わらせ、それ以上は説明不要という印です。それに対して「?」マークは無限の広がりを与えてくれます。

全体の下書き - 基本要素を見つける

点と点、シーンとシーンを繋いだら、物語の基本要素を深掘りしていく。

位置: 814

アウトラインが形になり始めたら「動機、欲望、ゴール、葛藤、テーマ」を意識します。これらの五要素をうまくプロットに当てられるか、早期に判断するほど長期的な作業が楽になります。

動機について。

位置: 842

派手なアクションで盛り上げようとしても、それなりの動機がないと読者はついてこれません。動機の設定はとても大事です。動機は必ずゴールと結び付きますから、障害や葛藤も見つけやすくなります。

欲望について。

位置: 857

フィクションを突き詰めていくと、その中核にあるのは主人公の欲望です。欲望がエネルギーを生み、主人公は一ページ、また一ページと障害を乗り越えます。ストーリーとは葛藤であるとよく言われますが、人物が何かを求め、何かにぶつからない限り葛藤は起きません。読者を惹きつけて離さない大作を書くには、それだけ強烈に何かを求める人物が必要です。

葛藤について。

位置: 906

ストーリーの原料として、かくも貴重な葛藤、対立。どうすれば作れるのでしょうか?  答えは簡単。人物の動機、欲望、ゴールを設定し、人物とゴールとの間に障害物を置くだけです。

位置: 965

大きなスケールでの葛藤(家族の危機、第三次世界大戦など)に加え、人物の心のせめぎあいも描くということ。シーンごとに対外的なバトル(障害に対する身体的、物理的なリアクション)と、内面のバトル(出来事に対する心理的、感情的なリアクション)の両方を描きましょう。どちらか一方が欠けたシーンは物足りない印象を生みがちです。

さらに、物語全体を貫くテーマについて。

位置: 1,000

物語にメッセージを込めることは、作者の信条や持論を書くことではありません。あなたが強く信じるテーマを選び、グレイゾーンでもがく人物を多面的に描くこと。そして、読者が厳しい問いを自分に投げかけたくなるようなプロットを作ることです。小説家の仕事は答えを提示することではなく、疑問を投げかけることだ、という言葉もあるほどです。

位置: 1,029

たいてい、一つのストーリーには複数のテーマがあるでしょう。その中から一つ、突出したものを見つけて中心に据えましょう。次の質問について考えながら選んでみて下さい。

•主人公の心の葛藤は? たいていアウトラインの初期で答えが出せる。ストーリーの原動力。

•ストーリー上の出来事で、主人公のどんな考えが変化する? どのように、なぜ変わる? 物語に潜むテーマはこの問いでわかる。人物の考えが行動を決め、その行動がストーリーを決める。

•ストーリーの最初と最後、主人公の考えや態度はどう表れる? 前の質問の延長だが重要。前に人物アークで述べたとおり、オープニングとエンディングでの人物のあり方を読者に提示する。

•テーマとそれに対する人物の態度を象徴するものは? テーマと同様、象徴による表現も自然に導き出される方がよい。たとえば特定の色やイメージの使用。効果的なものが見つかれば、後からでも表現にプラスできる(「象徴的な表現でテーマを強化する」の項を参照)

•テーマを明言せず、サブテクスト[言葉の裏に隠された意味]で表現するには? テーマは間接的に伝える方がパワフル。人は成長して考えが変わっても、すぐに言葉で表現できない。小説の登場人物も同じ。『ロード・ジム』は島を救う理由を言葉で説明する必要がない。作者がすべてを文章にしていたら、作品の力は弱まっていたはず。

テーマに関する質問の例。

位置: 1,044

欠点:クリス・レッドストンは自己中心的で無責任。冒険ばかり求め、周囲を傷つけていることに無頓着。

誰が傷ついている? 父親、ジョー、通りすがりの人たち、ブルック、リサ、マイク。

人物は何を求めている? クリスは夢を止めたい。

人物は何が必要? 責任ある行動をし、人々のために尽くすべき。

ストーリーの初め、彼が知っていることは? 人は無責任で他人を傷つける。人生は常に破滅と隣り合わせ。だから精一杯生きるしかない。痛みを忘れ、生きる実感を得るために無謀な行動に走る。無責任でいれば、誰も責任を求めない。あるいは誰かが傷つく。(人を傷つけないかという恐れを心の奥に隠している。口には出さない。)

ストーリーの初め、彼は何が間違っている? とにかく無責任でいれば人を傷つけないと考えている。命を危険にさらさないと生きている実感がわかないと思っている。

ストーリーを通して何を学ぶ? 自分の行動に責任を持ち、人のために行動すること。

主人公の中心的な問題:責任をとることは軽率な決断ではなく、時に魂の奥底から交わす約束であると理解すること。

テーマの指針:無責任な行動が二つの世界を危機に陥れ、青年は責任感に目覚めていく。

テーマ:人間として成功するには自らの行動に責任をとらねばならない。たとえ自分が一番好きなものを失なうとしても。

人物像の下書き(キャラクター・スケッチ)

位置: 1,110

全体の下書きでプロットとストーリー・アークの大枠をつかみ、当座のプロット上の空白を埋めたら「人物像の下書き」を、まずバックストーリーから始めます。ヘミングウェイは「氷山が見えるのは全体の八分の一だけ」と言い、語らない部分の重要性を説きました。

位置: 1,114

バックストーリーとは読んで字のごとく、本編の「裏にある」ストーリーです。本編が始まる前の物語であり、人物の決断や行動を生み出す源ですから、物語の進行や整合性作りに欠かせません。特に今は、時系列の途中から物語を始めるのがトレンド。バックストーリーは本編と同じぐらい重要です。

バックストーリーは全て語る必要はないもの。また、バックストーリーをほのめかすことは有効なテクニックである。

バックストーリーを考えるための✓リスト。

位置: 1,259

□インサイティング・イベントを見つける。

□人物のおおまかな背景を書く。

□主人公に影響を与えた人間関係を考える。

□登場人物の学歴、職歴、居住地や旅の履歴を考える。

□人物にとっての大きな出来事を考える。

また、登場人物に対してインタビューを行う「人物インタビュー」もバックストーリーや性格を考える上で使える手法である。人生観や性格の特徴(長所・短所)、よくする表現などいくつかの質問を考えると良い。

世界観

人物像が出来上がったら、世界観の深掘りである。風景、自然環境、社会・文化・宗教、人種、国家・政治、テクノロジー、歴史、世界の法則などを設定する。

位置: 1,478

ファンタジー作家パトリシア・C・リーデがまとめた「ファンタジー世界構築クエスチョン」もお勧めです(http://www.sfwa.org/2009/08/fantasy-worldbuilding-questions/〔英語〕)。

詳細アウトライン

ここまでで、アウトラインの大筋ができたので、次はそれを詳細にしていくプロセスである。また、このタイミングで主観を決めると良い。

位置: 1,622

主観の数は自由ですが、次に挙げるヒントで適度な数にまとめて下さい。

•主観をとる人物は、心情が表現されやすい。そのため、その人物が重要だとみなされる。

•複数の主観を使うと、読者は複数の人物の視点からものごとを見ることができる。

•主観をとる人物を増やすほど、読者の関心や愛着が分散する。

•いろいろな人物の主観をとればストーリーは寸断され、焦点がぼやける。

また、詳細アウトラインではフレーミングというテクニックも使える。

位置: 1,717

フレーミングとは、本編の最初と最後に揃いの表現を用いるテクニックです。作品にまとまりを持たせ、充実した読後感を演出できますので、忘れずに使いたいものです。オープニングで人物や舞台設定、テーマを特徴的に紹介し、エンディングで締めくくります。

シーンの見直し

詳細アウトラインができたら、シーンの見直しが必要となる。「このシーンは本当に必要か?」と考えていく。また、シーンを省略するテクニックも使えるか検討する。

位置: 1,903

シーンをどこで区切るかは作家にとって重大な課題です。登場人物やストーリーがいくら華麗で魅力的でも、章やシーンの区切りで「続きが読みたい」と読者が思わなければ水の泡。全部をクリフハンガーにする必要はありませんが、読者に強い好奇心を抱かせる終わり方が必要です。

位置: 1,952

ブランドン・サンダースンファンタジー小説『エラントリス』で「シーン割り」をし、もたつきをすっきり取り去っています。目立たないけれど、非常に有効な手法です。  サンダースンの作品はどれも大作で、およそ七百ページに迫ります。ともすればその倍の厚さになりそうなところを、うまくカットしているのです。主観や舞台の変わり目だけでなく、さりげないところもカットしてつないでいます。たとえば、悪者が長い階段を上るところを短く描写できそうであっても、シーンを変えることによってばっさりと削除し、縮めています。その結果、ストーリーの贅肉は落とされ、ペースもアップ。タイトですっきりした展開をしています。

【要約・感想】ストラクチャーから書く小説再入門 - K.M.ワイランド、シカ・マッケンジー

本の内容

内容紹介より

本書では、傑作に欠かせない「構成」=ストラクチャーを映画の構成、脚本術をもとに指南します。単なる“ひらめき”を作品化し、独創性と個性を最大限に引き出すために大切なこととは何か。勘を頼りに書けても確かな技術は身に付きません。  物語にインパクトを持たせながらもバランスと整合性を生み、最後まで書ききることができる強い物語に必要なことを、それぞれストーリー(物語)の構成、シーン/シークエル(場面/つなぎ)の構成、文の構成から、丁寧に解説します。

目次

  • Part.1 ストーリーの構成
    • Chapter.01 掴み(フック)
    • Chapter.02 物語をどこから始めるべきか?
    • Chapter.03 最初の章の注意点
    • Chapter.04 第1幕 パート1 : 登場人物の紹介
    • Chapter.05 第1幕 パート2 : 危機と舞台設定の紹介
    • Chapter.06 プロットポイント1
    • Chapter.07 第2幕の前半
    • Chapter.08 第2幕の後半
    • Chapter.09 第3幕
    • Chapter.10 クライマックス
    • Chapter.11 解決
    • Chapter.12 エンディングをさらによくするために
    • Chapter.13 構成についてよくある質問
  • Part.2 シーンの構成
    • Chapter.14 シーン
    • Chapter.15 シーンの「ゴール」の選択肢
    • Chapter.16 シーンの「葛藤」の選択肢
    • Chapter.17 シーンの「災難」の選択肢
    • Chapter.18 シークエル
    • Chapter.19 シークエルの「リアクション」の選択肢
    • Chapter.20 シークエルの「ジレンマ」の選択肢
    • Chapter.21 シークエルの「決断」の選択肢
    • Chapter.22 シーン構成のバリエーション
    • Chapter.23 シーン構成についてよくある質問
  • Part.2 文の構成
    • Chapter.24 文の構成

感想

ハリウッドの脚本術の定説である、三幕構成に基いて小説の構造を説明するというもの。この手の本を読むのは初めてだが、例文が非常に多いため理解しやすい内容であった。

同じ著者の書籍に、『アウトラインから書く小説再入門』があるが、本書を先に読んだほうがより理解が深まると思う。

要約

「ストーリーの構成」についての解説から始まる。なかでも物語の開始地点であり、土台となる第一幕は丁寧に説明されている。

第一幕の掴み

第一幕でまず大事なのは、「掴み」。

位置: 250

「掴み」の形は様々ですが、根底にあるのは「疑問」です。読者が「知りたい」と思えば、掴みは成功。極めて単純です。

位置: 251

どんな小説も、まず最初に紹介するのは登場人物と舞台設定、葛藤[=conflict/二者が対立すること]の三点ですが、いずれにも、まだ掴みは入っていません。読者に「これからどうなるのだろう?」と好奇心を抱かせた時に、初めて掴みが成立します。

また、第一幕では読者に「読みたい」と思わせることが大事である。

位置: 320〜340

「もっと読みたい」と思わせる要因を、五つのパートに分けてみます。

1.疑問を感じさせる。

2.人物を登場させている。

3.舞台設定を伝えている。

4.何かを明確に言い切っている。

5.作品全体のトーンを感じさせる。

小説『高慢と偏見』を「掴み」の例として、紹介している。

位置: 351

「どこの世間も認めることだが、裕福な男は皆、花嫁募集中である」という書き出しは有名。かすかな皮肉がこの先の困難を予想させる、見事なオープニング。

第一幕では、すべての情報を明かす必要はないですが、舞台設定や登場人物、主人公の目的などある程度の情報が必要とされます。

位置: 555

情報を隠し過ぎればサスペンスは成立しません。読者がシチュエーションを理解した上で、成り行きを見守るように仕組まなくてはなりません。

さらにプロローグに関しては、明確な必要性がない限り入れるべきではないと説明する。ただし、以下のように上手く用いれば非常に効果的に読者の関心を誘うことができる。

位置: 611

秀逸なプロローグには、「掴み」にわずかな文章を足した程度の短いものが見られます。人物や物語には少ししか触れず、紹介すらしようとしていません。何らかの重要情報(物語前後の出来事や敵対者の視点など)だけを提示します。できる限り短く、情報量を最小限にとどめれば、プロローグは邪魔になりません。

位置: 673

バックストーリーは、語らない──あるいは、見せない時が最もパワフル。ぼんやり覆う影のようであってこそ力を発揮します。読者はそれを感じ取り、人物に影響するのを見て取ります。ディテールを全部知らせることは大事ではありません。

第一幕の内容

位置: 690

読者の心を掴んだら、本の最初の二〇~二五%で人物や舞台設定、危機を紹介します(全体を三つの「幕」に分けると「第一幕」に当たります。今後、序盤を「第一幕」、中盤を「第二幕」、終盤を「第三幕」という三幕構成に当てはめて説明していきます)

位置: 696

本の最初の二五%で、ストーリーに出てくるものは全て登場させましょう。

位置: 820

人物の登場と同時に、その人物の「大切なもの」も紹介します。その人物が必死で守りたいものです。後にこれをめぐって戦うことになりますから、「大切なもの」を脅かす存在も紹介します。つまり、「敵」も第一幕で紹介するということ。あるいは、少なくとも存在をにおわせておきます。

位置: 855

家族や仕事、名誉などに対する人物の思い入れを描写すればするほど、後でテンションを高めることができます。この「思い入れ」描写ができる場は、第一幕が最初で最後。

位置: 951

名作の第一幕から学べることは?

1.「掴み(フック)」がうまくいったら、後はアクションをスローダウンして人物紹介を深く行なっても大丈夫。

2.人物の主な特徴、動機、信念はしっかり作り込む。

3.作品でメインとなる舞台設定は第一幕で提示。第二幕で説明しようとすると、中盤のペースが落ちてしまう。最初の大きな転機(プロットポイント1)までに読者に設定を見せておく。

4.危機感を高めるには、人物に対する読者の感情移入を図ること。

5.どのシーンにも意味がある。最初の転機(プロットポイント1)に到達するまで、ドミノのような連鎖反応が起きるようにシーンを並べる。

第二幕へのプロットポイント1

全体の25%を経過したあたりで状況が一変する出来事や事件が起き、第二幕へと突入していきます。第一幕で登場人物を魅力的に見せ、舞台を整え、ようやく物語が動き始めるポイントです。これをプロットポイント1と言います。

プロットポイントでは、何の前触れもなく出来事が起きても読者が置いてきぼりにされてしまうため、「インサイティング・イベント」と「キー・イベント」の2つを出来事の前に入れる必要があります。

位置: 1,019

オープニングから二五%地点までの間に必ず置きたいものが二つあります。それが「インサイティング・イベント(物語を誘発する事件)」と「キー・イベント」です。二五%地点までならどこに入れてもOK。

位置: 1,040

インサイティング・イベントとキー・イベントは、大抵、はっきり区別されます。「キー・イベント」とは人物を事件に巻き込む出来事。探偵小説で考えるとわかりやすいです。まず、どこかで事件(インサイティング・イベント)が発生する。あるきっかけで探偵は依頼を受けて(キー・イベント)調査に乗り出す。つまり、インサイティング・イベントによって動き始めた物語に主人公をくっつける糊の役目をするのがキー・イベントです。

位置: 1,044

通説では、インサイティング・イベントは次のどちらかで起こすべしと言われます。一つは、第一章の「掴み」の部分。もう一つは、二五%地点のプロットポイント1。

位置: 1,049

第一幕で書くべき情報を含めた流れで言うと、「冒頭で事件(インサイティング・イベント)発生→舞台設定の説明→人物紹介→主人公が事件に巻き込まれる(キー・イベント)」というような順序でもいいでしょう。

位置: 1,077

過去に起きたインサイティング・イベントを受け、小説の一ページ目が始まる設定も可能。だが、キー・イベントは必ず作中で描き、主人公がプロットに巻き込まれる瞬間を読者に体験してもらう。

第二幕

第二幕の前半は、プロットポイント1を受けて物語が展開されていきます。作品のちょうど中間地点のことを「ミッドポイント」と呼び、第二幕の中間地点にもなるのですが、そこに至る前に「ピンチポイント1」が入ります。

位置: 1,111

第二幕前半の終わり頃(第二幕全体のおよそ八分の三地点)、主人公は「ピンチポイント1」に遭遇します。敵対者が腕を振りかざし、強大な力を見せつけてくるところです(主人公も負けじと対抗するでしょう)。ミッドポイントが来る前に今一度、読者に敵の力を思い出させ、主人公に作戦変更を迫る流れを作ります。また、危機感を高め、クライマックスの伏線を張るのもピンチポイントの役目。

そして、物語の中間地点である「ミッドポイント」。以下のようなことに注意すると良いそうです。

位置: 1,206

1.ミッドポイントは全体の五〇%地点に配置する。目的は、人物が受け身で反応する部分と攻めの行動をする部分を均等にすることと、中心点として際立たせること。

2.ミッドポイントには新鮮でドラマチックな出来事を選ぶ。論理的な流れに沿いつつ、全く新たな展開を引き起こさなくてはならない。

3.ミッドポイントは変化を引き起こす。主人公はそれまでのやり方を変える必要に迫られる。もはや、ただ反応するだけでは立ち行かない。

そして、物語の後半に突入します。前半は出来事に巻き込まれ、敵対者に追い詰められるなど不利な状況が続きますが、後半からは主人公が決意を固め、パワーアップしていきます。

位置: 1,248

この部分を使って人物を鍛え抜き、終盤のクライマックスへと運んで下さいね。失敗から学び、また問題に直面させ、敵(主人公自身が内面に抱える敵も含む)に立ち向かう準備をさせましょう。

位置: 1,248

第二幕後半は準備期間と捉え、後に人物が直視せねばならない欠点を、伏線として描いておきましょう。

第二幕後半のポイント。

位置: 1,321

1.五〇%地点のドラマチックな転機で第二幕後半が始まる。

2.ミッドポイントで主人公はアクション開始。リアクションもするが、無力で受け身な状態からは脱却。力に目覚め、攻めの姿勢に転じる。

3.第二幕後半の真ん中でピンチポイント2。敵の存在と威力を再び提示。

4.第二幕後半は主人公の「気づき」の時。ミッドポイント後は敵のことも自分のことも、前よりはっきり見えてくる。

5.主人公の「気づき」の時期が攻めのアクションと重なることもある。「故意に無視する」だけでも相手への攻撃になる。

6.第二幕後半で主人公の問題は幾分か解決されるが、まだ不完全。内面の欠点や対外的な問題が解決するのは第三幕。第二幕の問題解決は真の対立を悪化させたり、目立たせたりすることがよくある。

第三幕

第三幕に関してのポイントは、ほかに比べると少なめです。主人公が目的を達成し、伏線を回収します。

位置: 1,481

終盤の文章を大きく変えるテクニックが一つ存在します。

それは、終盤の章とシーンを短くするだけ。そうすれば、視点をとる人物間の運びはおのずと速くなり、どんどん速度を上げて結末に突き進む感覚が表現できます。

シーンを短くすると、その中の段落も文も短く書かねばなりません。短い文で歯切れよく進めば、スピード感が出るというわけです。

ハッピーエンドが良いのか、サッドエンドが良いのかなどの説明もありますが、ここでは端折ります。

シーンの構成

次に物語を構成するシーンについてです。シーンは、物語の基本構成単位とも呼べるものです。

位置: 1,954

これから「シーン」を二つに分けて説明します。一つはシーン(主にアクション=出来事や行動を描く部分)、もう一つはシークエル(出来事に対するリアクション=人物の反応を描く部分)。

シーン部分は、「ゴール」「葛藤」「災難」によって構成され、シークエル部分は「リアクション」、「ジレンマ」、「決断」によって構成されます。

シーン部分は出来事であり、シークエル部分はシーンで起きたことを受けた主人公の心情描写などです。たとえば、「あるモンスターを倒すことを目的にダンジョンに向かうが、途中でトラブルが起きて仲間のひとりが亡くなる」というのがシーン部分。それを受けて、「主人公は深い後悔にさいなまれ、あるモンスターの討伐を諦めるかどうか悩み、なんやかんやあって再び挑戦する決意をする」というのがシークエル部分。

シーン部分とシークエル部分は明確に別れている場合もあれば、シーン部分での出来事と同時にリアクションが起きるということもあるそうです。また、いくつかの要素が文脈上端折られることもあります。

シーンのゴール

シーンのゴールについて。

位置: 2,157

1.具体的なもの(品物、人など) 2.無形のもの(尊敬、情報など) 3.身体的な状態からの脱出(身柄の拘束、苦痛など) 4.精神的な状態からの脱出(心配、疑惑、恐怖など) 5.感情的な状態からの脱出(悲しみ、憂鬱など)

位置: 2,164

こうしたゴールを達成するために、よく取られる手段は次のようなものです。

1.情報を求める。

2.情報を隠す。

3.身を隠す。

4.誰かを隠す。

5.誰かと対決する。または、誰かを攻撃する。

6.物を修理したり、破壊したりする。

物語は基本的に「一難去ってまた一難」という流れになります。物語全体のゴールという大目標に向かってシーン毎に小目標があり、それを達成するか失敗し、また新たな小目標が生まれるという感じです。

シーンの葛藤

「葛藤」という言葉だと理解しにくいので、問題や障害と言ったほうが良いかもしれません。

位置: 2,262

人物に多くの欠点を与えましょう。そして、たくさん衝突をさせること。ぶつかり合う動機を与え、敵対人物も作り、葛藤不足にならないようにして下さい。

位置: 2,307

葛藤には次のようなものがあります(これらは一例です)。

1.ケンカ、殴り合い。

2.言い争い、口ゲンカ。

3.物理的な障害(悪天候、道路封鎖、身体の負傷など)。

4.精神的な障害(恐怖、記憶喪失など)。

5.物資の欠如(ケーキを焼くための小麦粉がないなど)。

6.知的財産の欠如(情報が得られない)。

7.行為をしないことによる攻撃(わざと、あるいは無意識に)。

8.間接的な妨害(他の人物が遠まわしに、あるいは無意識に対抗する)。

シーンの災難

目的を持って何かしらの障害や問題に立ち向かい、その結果となるのがこの「災難」です。

位置: 2,386

「災難」とは「まずい結果、よくない出来事」ですから、シーンを構成するブロックの中で最も見つけやすいです。おおまかに、次の種類に分けられます。

1.ゴールへの道が直接的に妨害される(例:情報がほしいのに、相手が教えてくれない)。

2.ゴールへの道が間接的に妨害される(例:出世コースを外される)。

3.ゴールへの道が部分的に妨害される(例:必要なものが部分的にしか手に入らない)。

4.成功したかに見えるが、実は失敗だったことがわかる(例:ほしいものを手に入れるが、むしろそれが害になることが発覚する)。

必ずしも問題に失敗する訳ではないので、次のシーンにつなぐための新たな問題、障害と理解しても良さそうです。

位置: 2,373

プロットの進行上、あえて「災難」を災難らしく見せない時もあります。「ゴールの部分的な妨害」もしくは「うわべだけの勝利」を描く場合です。小説家ジャック・M・ビッカムはこれを「『うまくいったと思いきや』の災難」と呼んでいます。

シークエルのリアクション

シーンでの出来事を受けて、登場人物たちが具体的な行動をとったり、心情変化が起きたりします。

位置: 2,425

シークエル部分では人物が過去を省みたり、落ち着いて会話する様子を通して内面の変化を表現します。実は、この部分が疎かにされがちです。

そして、目的を持って行動したのに災難に見舞われたことから、登場人物の中でジレンマが生まれます。

位置: 2,454

「災難」に遭遇した人物は(大部分は反射的に)反応した後、ジレンマに襲われます。わかりやすく言えば、「じゃあ、どうしよう?」。実際はもう少し具体的です。

次のシーンへ

そして、ジレンマを経て決断がなされます。

位置: 2,460

シーンの結果が「災難」になって新たな問題が生まれ、シークエル部分で状況を分析し、手段を見つけようとする。そして次のシーンで実行する、という流れになります。

位置: 2,467

人物はジレンマを経て決断します。次のシーンに移るためには新たなゴール設定が必要。うまくいくかは別として、新たな計画を立てなくてはなりません。

位置: 2,633

人物の「決断」は、「シーン」のブロックの中で最も本能的に行なわれるものかもしれません。「ジレンマ」を経て「決断」すると、次のシーンのゴールが生まれます。

通過点とハプニング

位置: 2,771

「ストーリーは最初から最後まで全部、シーンとシークエルをつなげて書かないといけないの?」と思う方もいらっしゃるでしょう。中には「葛藤」も「災難」も起きない場面もあります。人物のゴールと関係ない出来事が起きる時もあります。  ルールには常に例外があります。代表的なものは「通過点(incident)」と「ハプニング(happening)」です。

位置: 2,776

通過点にシーンの構造はありません。人物は何かをしようとして登場しますが、誰とも敵対せず、葛藤しません。  主人公にプレッシャーを与え続けたい反面、ずっと葛藤させ続けるには無理があります。たまには主人公の思いどおりに運ぶ場面もあるでしょう。

位置: 2,787

ハプニングは人々に接点をもたらします。これにもゴールや葛藤はないため、ドラマ的な「シーン」とは別物と考えます。  人物を登場させたり、情報を提示したりするために挿入する、ちょっとした出会いの場面などが「ハプニング」です。主人公や読者に息抜きをしてほしい時にも使えます。

【要約・感想】採用基準 - 伊賀泰代

本の内容

内容紹介より

就職超難関企業と言われるマッキンゼーは、地頭のよさや論理的思考力が問われると思われがちだ。しかし元採用マネジャーの著者は、このような定説をきっぱりと否定する。マッキンゼーでは世界で通用する人材を求めており、頭のよさだけではない。それは現在の日本が必要としている人材像と同じと言える。

目次

  • はじめに
  • 序章 マッキンゼーの採用マネジャーとして
  • 第1章 誤解される採用基準
    • 人気の高まりと誤解の拡大
    • 誤解その1:ケース面接に関する誤解
    • 誤解その2:“地頭信仰”が招く誤解
    • 誤解その3:分析が得意な人を求めているという誤解
    • 誤解その4:優等生を求めているという誤解
    • 誤解その5:優秀な日本人を求めているという誤解
    • Column 東京大学における法学部と経済学部の学生の格差
  • 第2章 採用したいのは将来のリーダー
    • 問題解決に不可欠なリーダーシップ
    • リーダーシップは全員に必要
    • 将来のリーダーを採用するという戦略
    • スクリーニング基準と採用基準の違い
    • Column 保守的な大企業で劣化する人
  • 第3章 さまざまな概念と混同されるリーダーシップ
    • 成果主義とリーダーシップ
    • 成果より和を尊ぶ組織
    • 救命ボートの漕ぎ手を選ぶ
    • 役職(ポジション)とリーダーシップ
    • マネジャー(管理職)、コーディネーター(調整役)
    • 雑用係、世話係
    • 命令する人、指示する人
    • Column 能力の高い人より、これから伸びる人
  • 第4章 リーダーがなすべき4つのタスク
    • その1:目標を掲げる
    • その2:先頭を走る
    • その3:決める
    • その4:伝える
    • Column マッキンゼー入社を目標にする困った人たち
  • 第5章 マッキンゼー流リーダーシップの学び方
    • カルチャーショックから学ぶ基本思想
    • 基本動作1:バリューを出す
    • 基本動作2:ポジションをとる
    • 基本動作3:自分の仕事のリーダーは自分
    • 基本動作4:ホワイトボードの前に立つ
    • できるようになる前にやる
    • 自分のリーダーシップ・スタイルを見つける
    • Column ホワイトカラー職種も海外流出?
  • 第6章 リーダー不足に関する認識不足
    • 組織的・制度的な育成システムが必要
    • 絶望的な「グローバル人材」という言葉
    • 「優秀な人」の定義の違い
    • カリスマリーダーではなく、リーダーシップ・キャパシティ
    • 非常時の混乱、財政難の根因となるリーダー不足
    • Column 不幸な海外MBAへの企業派遣制度
  • 第7章 すべての人に求められるリーダーシップ
    • あらゆる場面で求められるリーダーシップ
    • 上司の判断を仰がない若手コンサルタント
    • リーダーシップは学べるスキル
    • 分散型意思決定システムからの要請
    • Column リーダー養成に最適なNPO
  • 終章 リーダーシップで人生のコントロールを握る
    • 問題が解決できる
    • 成長が実感できる
    • 自分の世界観が実現できる
    • 世界が広がる
    • 変わっていくキャリア意識
    • 価値観転換機関としてのマッキンゼー
    • 広がる世界で人生のコントロールを握る
  • あとがき

感想

リーダーシップに書かれているが、マッキンゼーでの内容に寄りすぎていてリーダーシップについてきちんと学びたい人には向かない。文章は読みやすいので、流し読みしながら2時間弱で読める。

要約

著者の経験を元に、マッキンゼーにおける採用、ひいてはこれからの世界で求められる人材の”採用基準”について書かれた書籍。

マッキンゼーの採用基準

マッキンゼーでの採用は、「とにかく考えることが好きか」「どのような思考プロセスか」の2つが基準であり、ケース面接はそれを確認するためのものであるとのこと。そのため、ケースが解けなかったと思っていたが内定したり、その逆にケースが解けたのに落ちたということが起きる。

位置: 404

では、ケース面接では何が見られているのでしょう? なによりも面接担当者が知りたいのは、「その候補者がどれほど考えることが好きか」、そして「どんな考え方をする人なのか」という点です。考えることが好きな人なら、どんな課題についても熱心に考えようとするでしょう。「考えることが楽しくて楽しくて」という人でないと、毎日何時間も考える仕事に就くのは不可能です。

位置: 422

ビジネスケースのような仮定の条件をおいて議論をすると、その人の思考プロセスや思考スタイルが如実にわかります。面接者が知りたいのは、「その思考プロセスが正しいか正しくないか」、「よいか悪いか」ではなく、「どんなタイプの思考プロセスをもつ人なのか」ということです。

リーダーシップ

また、マッキンゼーではこれに加えて「将来のリーダー」であるかも採用基準であり、問題解決スキルに加えて問題解決リーダーシップが強く求められている。

位置: 719

問題解決スキルとはご存じのとおり、MECEやロジカルシンキング、仮説思考、フレームワークなどの思考テクニックを使って、問題を整理・分析し、解を見つけるための技術です。一方、問題解決リーダーシップとは、解くべき課題(イシュー)の定義から、分析の設計、関連する組織や人とのコミュニケーションを含む一連の問題解決プロセスにおいて、リーダーシップを発揮することです。

位置: 1,197

しかし繰り返しになりますが、リーダーは組織の和よりも成果を出すことを優先します。したがって強力なリーダーは、同じ時代、同じ空間を共有する人にとっては、必ずしも「一緒に働いて楽しい人」ではありません。

リーダーに求められるのは、「目標を掲げる」「先頭を走る」「決める」「伝える」の4つである。

目標を掲げる

位置: 1,265

まずリーダーに求められるのは、チームが目指すべき成果目標を定義することです。そしてその目標は、メンバーを十分に鼓舞できるものである必要があります。

先頭を走る

位置: 1,344

リーダーというポジションを「目立ちたがり屋がやりたがるポジションだ」と考えている人は、リーダーとして先頭に立ち、苦労した経験がないのでしょう。リーダーは多くの場合、他のメンバーより圧倒的に大きな負担をしょい込んでいます。それでも成果を上げるために、最初の一人になろうとする人がリーダーなのです。

決める

位置: 1,366

リーダーとは、たとえ十分な情報が揃っていなくても、たとえ十分な検討を行う時間が足りなくても、決めるべき時に決めることができる人です。議論を打ち切り、決断すべきタイミングはどの時点なのか、判断できる人です。

伝える

位置: 1,422

黙っていても伝わるとか、わかってくれているはず、は通用しません。問題が発生した場合も、問題の原因や対処方法の選択肢、さらに、その中からなぜこの案を選んだのかという判断の根拠も、言葉で説明する必要があります。これがアカウンタビリティ(説明責任)と呼ばれるものです。

位置: 1,436

強いチームとは、多様な価値観をもつ人が集まったチームです。そして多様な個性の人が集まったチームでは、リーダーには常に「言葉で伝える」ことが求められるというわけです。

これから求められるのはリーダーシップ

位置: 1,883

欧米における優秀な人の定義において、決して抜けることのない項目がリーダーシップです(ほかには、「クリエィティビティ」や「イニシアティブ」(自発的に声を上げ行動に移す態度)、「ジャッジメント」(判断力)などを挙げる企業も多いと思われます)。

位置: 2,439

私は、「リーダーシップを発揮することは、自動車のハンドルを握ることと同じである。リーダーシップを身につければ、自身が人生のコントロールを握ることができる」という表現をよく使います。